津波乗り越えた気仙沼の地酒発売へ/ルポ
被災した地酒が復興の旗印となる。津波で倒壊した宮城県気仙沼市の酒造会社角星が、津波発生時に仕込まれ奇跡的に難を逃れた約3500本分の新酒 「両国」に、復興を呼び掛けるラベルを貼り、出荷を計画している。生き残った約6000リットルの清酒は高台のタンクで熟成中で、今秋にも同県内を中心に 出荷される。
がれきになった土蔵造りの店舗を背に、たった1本生き残った一升瓶を手にする斎藤嘉一郎社長(53)は言った。「困難は続くと思いますが前へ進ん でいきたい。がんばろう気仙沼のような復興のシンボルになるラベルを作りたいんです」。創業105年目の老舗店舗は倒壊した。だが、酒造工場は寸前で浸水 を免れ、微妙な温度管理が必要とされる「もろみ」段階の酒も無事だった。しかし、発酵が止まると品質が劣化するため、借り受けた大型発電機を使い従業員 10人が不眠不休で管理。ぎりぎりのところで酒かすと清酒を分ける圧搾ろ過に成功した。
清酒「両国」は、昨年の全国新酒鑑評会で金賞を受賞した人気商品だ。斎藤社長は「港町の酒蔵らしく新鮮な魚介本来のうま味を邪魔しない酒造りをみ んなで目指してやってきた。気持ちが落ち着いたときにお酒は必要になる。つらい心を癒やす酒を提供できれば」と話した。【下田雄一】
[2011年3月31日8時19分 紙面から]
http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp0-20110331-755018.htmlより