日本酒の昨年の輸出量が過去最高を更新したことが、財務省貿易統計で分かった。東京電力福島第1原発事故を受け、海外で一時輸入規制が広がったが、東日本大震災の被災地をはじめとする各蔵元の地道なPRや、行政機関による放射性物質の検査徹底が、海外の消費者の安心感につながったようだ。

宮城県大崎市の酒造会社「一ノ蔵」は、震災で在庫の日本酒の半数が破損。しかし、醸造用水の水質検査結果などをホームページで掲載し、米国などへの輸出を続けた。広報担当者は「以前と変わらず飲んでくれるのがありがたい。安心してもらえる酒造りを続けたい」と話す。今後も定期的に検査を続ける予定だ。

京都市伏見区の大手酒造会社「月桂冠」は、一部商品に製造地証明を付けて輸出している。担当者は「震災で一時鈍ったが、その後輸出は持ち直した。日本酒の認知が進み、売り上げに占める輸出商品の割合は年々高まっている」と話す。

貿易統計によると、海外の日本酒ブームで、輸出量は01年からほぼ右肩上がりが続いてきた。11年の輸出量は1万4013キロリットルで、前年を243キロリットル上回った。

輸出先は米国が29%と最も多く、韓国、台湾、香港と続く。米国は前年比で9.9%増加した一方、中国は40%の大幅減となった。国税庁の2月上旬時点の集計では、中国、ロシアが福島県産など被災地の酒輸入を停止中。米国や台湾、香港は輸入規制はなく、韓国、EUなどは放射性物質の検査証明書を一部要求している。

震災後、各国税局は、希望する蔵元にこの検査証明書を発行しており、1月末までに東日本を中心に341件に達した。製造地や製造日の証明書も出す。国税庁酒税課は「前年を超えたのは好ましい結果。できる限りの支援をしたい」としている。【井上大作】


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