日本酒の海外輸出というのは大変今後においても重要な課題となります。東日本大震災により「東北という消費のパイ」が失われてしまったことだけに限らず、西日本でも東の日本酒を応援してしまうがために、需要と供給のバランスが崩れてしまっています。

梵さんは海外のさきがけ的な企業で、国内はそんなに力を入れていないはずです。なぜならば、海外の人のほうが、日本酒を高く買ってくれるから、評価してくれるからなのです。

梵さんのような企業が増えろとは言いませんが、なにか私自身、海外への日本酒を持っていく切り口・課題を整理して実行に移さねばと考えております。



● 純米酒に特化、欧米に販路拡大
以前から、最近うまくなった酒をもっと外国にも売って国際商品にしたらいいと思っていたが、3月5日の日経新聞にがんばっている企業が紹介された。加藤吉平商店(福井県鯖江市)で、醸造アルコール無添加の純米酒に特化、主力の「梵」の商標登録を100カ国以上で取得し、パリやニューヨークの三つ星レストラン数十店に販路を広げているそうだ。

ホームページを見ると、純米酒しか造らずすべて長期氷温熟成、“本物の旨さ”にこだわっているという。福島原発事故による放射能汚染で輸入禁止になっていた中国で2011年12月末から食品の一部と日本酒が輸入解禁になり、2012年2月に上海で催された“活力日本展”にも参加、大盛況だった。輸出の好調で、ここ数年売上高は2ケタ増を続けているという。

日本酒の輸出で大型商談成立が報道されている。小堀酒造店(石川県白山市)が現地の大手商社が輸入元になり、上海のスーパーや業務用酒販店に流通させる。福光屋(金沢市)はパリ高級レストランのオーナーシェフと共同開発した純米大吟醸をカルフールのフランス国内店で流通させる。

● 輸出は過去最高だが
財務省の貿易統計によると2011年の日本酒(清酒)の輸出は1万4013キロリットル、前年を243キロリットル上回って過去最高となった。輸出先では米国が最も多く、ついで韓国、台湾、香港と続いている。

国税庁の統計によると、2009年の清酒の販売数量は61万7000キロリットルで、1975年の3分の1近くに減っており、消費減少に歯止めがかからない。2011年の輸出量は最高を記録したといっても1万4013キロリットルで販売量の2%ほど、とても国内の消費減少をカバーできる状況ではない。ワインの輸入量が17万キロリットルほどらしいのでその10分の1にも満たない。

● 日本酒を国際商品に
清酒には「吟醸酒」「大吟醸酒」「純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」「特別純米酒」「本醸造酒」「特別本醸造酒」と「特定名称清酒以外の清酒」があるが、お役所(国税局)がメーカーのために作った分類らしく、飲む側(消費者)にはどういう違いがあるのかよくわからない。

このうち醸造アルコールを添加していないのは「純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」だけで、清酒生産量の17%程度だ。アメリカなどでは醸造アルコールを添加した酒は醸造酒とはみなされず、リキュール類扱いになり「ハードリカー」となって税率も高く、飲食店では特別の許可を得ないと提供できないらしい。日本酒はガラパゴス製品の典型のようだ。純米酒に特化した「梵」の成功を願う。同時に、日本酒業界が世界中の消費者、もちろん日本の消費者にも理解されるブランド戦略立直しを期待する。

清酒という土俵から一歩踏み出して、世界の醸造酒の土俵でワインなどと対等に戦える国際商品造りを期待したい。日本料理、フランス料理、中華料理などにあう醸造酒コンテストを日本であるいは世界各国で主催してもいい。(執筆者:有元舜治 日本経営管理教育協会監査役 編集担当:水野陽子)  

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0314&f=column_0314_010.shtmlより